「感染爆発」が起きているウイルス上の特性と、その解決策

  • 2021.08.19

皆さん、こんにちは。鴻池新田の心療内科「心のクリニック三木医院」の院長、三木です。

さて、これまで当ブログにも再三書いているように、デルタ株による新型コロナウイルス感染拡大がさらに広がっていますね。

朝日新聞デジタル2021/8/18より。ステージ4が「感染爆発段階」。

「緊急事態宣言を続けてるのに、感染が拡大するなんておかしい」と思うのも無理はありません。

しかしこれは、『デルタ株』の特性が大きく関わっているものであり、一概に緊急事態宣言が無意味というわけではありません。

医療者向け情報サイト「CareNet」に8/18付で、J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)提供として東京医大客員教授の山口佳寿博氏と日本鋼管病院の田中希宇人氏が連名で、デルタ株についての免疫特性を非常に詳しく解説しておりました。大変勉強になる内容ですので是非、確認できる方は目を通しておいてください。

https://www.carenet.com/news/clear/journal/52830

そもそも「免疫システム」って何なのか、わかりやすく言うと、「異物への対抗策」です。人間にはその対抗策が2段構えになっており、生まれつき持ってる「自然免疫」と、生きている中で備わってくる「獲得免疫」がありますが、その獲得免疫も2種類あって、「細胞性免疫」と「液性免疫」があります。

細胞性免疫は「T細胞」という免疫細胞自体が異物を攻撃するの対して、液性細胞は「B細胞」という免疫細胞が“抗体”を作って、そいつが異物を攻撃する、というシステムです。

そう、ワクチンの免疫システムは、この「液性免疫」による抗体を作る事で得られるんですね。

そこで『デルタ株』です。この変異株は、既感染者およびワクチン接種者が持っている抗体、つまり液性免疫に対して、時間経過とともに効果が弱まっていく(=抗体価が低下する)という事が分かっています。そしてその効果減弱は、年齢が高いほどに顕著であるようです。

このため、既感染者にもワクチン接種者にも、時間が経つごとに感染リスクが高まっていく事になります。

また、免疫システムのもう一つの種類である「細胞性免疫」についても、デルタ株は、“特に日本人にとっては”驚異的です。日本人の約60%は、HLA-A24という細胞性免疫を持っており、これは従来の新型コロナウイルスには有効でありましたが、このデルタ株には無効であることが判明しております。

https://www.amed.go.jp/news/release_20210616.html

つまり、このデルタ株において、日本人は「細胞性免疫」による盾が使えず、「液性免疫」の盾も(ワクチン未接種の方はそもそも持っていませんが)既感染者やワクチン接種者でも時間経過とともに失われ、ほぼほぼノーガードでウイルスを迎え撃たねばならない状況、という事になります。

これを解決するためには、先にご紹介したCareNet記事にも書かれていますが、「ワクチン3回目接種を(2回目接種後6~12ヶ月以内に)行い、液性免疫を上昇させる以外に有効な手段がない」、と言えます。

よもやまだワクチン接種を1回も行っていないのに外出・外食するなど、完全に自殺行為と言えるでしょう。

毎度ブログの最後に書いていますが、ワクチン接種者も未接種者も、引き続き感染予防に努めていきましょう。

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